荒尾市文化振興基本方針は、文化懇話会からの提言、市民参加等によるワークショップでの多種、多様なアイデアを基に、文化振興委員会において審議され、策定いたしました。
この文化振興基本方針は、本市が行う様々な文化振興施策を総合的、効果的に推進し、文化行政を積極的に進めていくための基本的な方向を明らかにするとともに、市民文化活動の共通の拠りどころとなる考え方を示すものです。
序章 文化振興基本方針の位置付け
近年、人々の生活意識や価値観の多様化などにより、真の豊かさとは何なのか、質の高い生活とは何なのかといったことが問われており、日常の暮らしの中にゆとりや潤いといった「心の豊かさ」が一層求められ、文化に対する関心や期待が高まってきています。
歴史や伝統は、先人たちのアイデアと実践の足跡であり、その体系が文化です。市民一人ひとりの日常生活の中での活動が、やがて地域の特色として文化へと繋がっていきます。
文化は、人々の生活の充実とこれからのまちづくりに大きな役割を果たすことが期待されています。
今を生きる私たちは、文化に親しめる環境を整備し、荒尾がもつ個性的な歴史・伝統を大切にするとともに、新しい文化を創造し、荒尾らしさを表現していく必要があります。
この文化振興基本方針は、本市が行う様々な文化振興施策を総合的、効果的に推進し、文化行政を積極的に進めていくための基本的な方向を明らかにするとともに、市民文化活動の共通の拠りどころとなる考え方を示すものです。
第1章 文化振興の目標
本市は、小岱山や有明海といった自然環境に恵まれ、古来、人々の営みの中から数々の伝統文化が生まれ、現在に受け継がれています。
さらに本市の基幹産業であった石炭産業の繁栄などにより、全国各地から移り住んできた人たちの文化を受け継ぎ、開放的で多様性のある文化が育まれてきました。
この郷土荒尾を市民一人ひとりが心の豊かさを実感できる地域社会とするため、優れた自然環境、独自の歴史、多彩な生活様式などに根ざした個性的な地域文化を創造し、発展させていくとともに、すべての人が豊かな文化を享受することのできる文化環境を創り上げていくことを文化振興の目標とします。
第2章 文化振興の基本理念
文化振興の基本理念は、次のとおりで個性的な地域文化の創造・発展と市民の豊かな文化の享受を目指して、文化振興施策を推進し、文化行政の充実を図っていきます。
- 地域の個性の重視
- 多様な交流の創出
- 世代間の文化継承
- まちづくりの推進
文化振興の目標
- 個性的な地域文化の創造・発展
- 市民の豊かな文化の享受
1.地域の個性の重視
地域の歴史、伝統や風土に培われた個性を尊重し、独自性のある取り組みを行い、荒尾ならではの文化を創造します。
2.世代間の文化継承
先人たちの努力によって培われた貴重な文化を受け継ぎ、大切に守り育て、次の世代に伝えていきます。
3.多様な交流の創出
年間延べ300万人を超える観光客を活かし、国内外の様々な地域との多様な交流を進めるなかで新しい文化を生み出すとともに文化活動の活性化を図ります。
4.まちづくりの推進
暮らしの中にゆとりや潤いといった心の豊かさや生活の質的向上を図るため、伝統文化を育みながら、美しい街並み、快適な生活環境、自然との共生などに配慮したまちづくりを進めます。
第3章 文化振興の基本的考え方
一人ひとりの市民が、豊かな文化を感じとり、ふる里荒尾の文化を誇れるように、自由で闊達な文化環境を育てていくことを本市の文化振興の基本とします。文化振興は単に芸術文化の振興だけではなく、伝統と個性を持つ地域で行われる市民の多様な暮らしや活動のなかで文化を大切にする心を育てていきます。
そのため、地域固有の歴史や培われてきた伝統をしっかりと受けとめ、その価値や魅力を学習し、これからの文化活動に活かせる環境を創っていきます。
まちづくりにおいては、つねに文化的な視点を念頭におき、市民の間にある文化的欲求を的確に感じとりながら、諸施策を展開していきます。
次代を担う子どもたちに対しては、豊かな人間性と多様な個性を育むため、文化活動への参加や文化に関する様々な体験の機会を充実していきます。
将来にわたり文化の果たす役割はますます大きくなります。荒尾らしさをより一層表現するため、国内外に誇れる文化を創りあげるよう市民と行政がともに連携、協力し、豊かな文化都市を構築していきます。
第4章 文化振興施策の体系
1.市民意識の高揚
- 学校教育における郷土学習、文化活動の促進
- 生涯学習の推進
- 優れた文化に接する機会の拡充
2 .文化遺産の保存と活用
- 文化資産への理解促進
- 文化資産の継承
- 調査、記録業務の推進
- 文化資産保存団体等の育成・支援
3 .市民文化活動の促進
- 参加機会の拡充
- 文化活動に関する情報提供
- 文化活動団体等への支援
- 活動団体等の顕彰
4.文化創造のまちづくりの推進
- 文化施設などの機能充実
- 文化的雰囲気を醸し出すまちづくり
- 交流文化の促進
- コミュニティ活動の推進
第5章 文化振興施策の方向
1.市民意識の高揚
1.学校教育における郷土学習、文化活動の促進
総合的な学習の時間の導入や公立学校の完全週5日制の実施など、地域で学ぶ教育が重視されるようになっており、郷土への誇りや関心を深めるため、学校教育における郷土学習や市民と学校の交流を推進し、児童生徒の地域に根ざした文化活動の促進を図ります。
2.生涯学習の推進
高齢化の進展などを踏まえ、生涯学習の指導者や文化ボランティアの育成など生涯にわたり多様な学習ができる体制を整備することにより、生涯学習の推進に努めます。
3.優れた文化に接する機会の拡充
市民の文化意識の一層の高揚を図るため、国内外の演奏家や芸術家などを招致し、演奏会や展覧会などを開催することにより、優れた文化に接する機会の拡充に努めます。
2.文化資産の保存と活用
1.文化資産への理解促進
陶芸教室や文化講座などを通して、貴重な伝統工芸や文化財への関心を高め、一層の理解促進を図ります。
2.文化資産の継承
文化資産を市民全ての財産として適切に保存し、継承するとともに、その積極的な公開、活用を図ります。また、新たな文化の担い手を育成し、次の世代に引き継いでいきます。
3.調査、記録事業の推進
たたら製鉄跡や窯跡などの学術的な調査や伝統芸能の映像記録事業などを推進するとともに、本市の歴史を後世に伝えるため、市史編纂事業を計画的に推進します。
4.文化資産保存団体等の育成・支援
「のばらさん」や「こくんぞさん」など地域に根ざした伝統文化を伝承するための体制や伝統工芸の発展に努めるとともに、これらの文化資産保存団体等の育成、支援に努めます。
3.市民文化活動の促進
1.参加機会の拡充
文化意識の高揚を図るため、市民文化祭など文化事業の活性化や文化活動の発表の場の提供に努めます。また、次代を担う青少年の文化活動の支援や視察、研修の機会を拡充します。
2.文化活動に関する情報提供
文化活動を促進するため、文化施設や文化活動など文化に関する情報を収集して、幅広い情報提供に努めます。
3.文化活動団体等への支援
公演・展示や調査研究など自主的な文化活動の充実を図るため、文化活動団体やまちづくり活動団体等に対して支援するとともに、文化活動の先導的役割を担うリーダーの育成に努めます。
4.活動団体等の顕彰
文化活動を行っている人たちの活動意欲や市民の文化に対する関心をさらに高めるため、文化の振興に顕著な功績のあった個人・団体の顕彰に努めます。
4.文化創造のまちづくりの推進
1.文化施設などの機能充実
市民の多様なニーズに対応できる文化施設の整備と機能の充実を図るとともに、余裕教室などの学校施設を地域の文化施設として位置付け、活用を進めます。
2.文化的雰囲気を醸し出すまちづくり
荒尾を象徴する伝統や自然をアピールし、文化的あるいは荒尾らしさを醸し出すまちづくりを進めます。
3.文化交流の促進
文化を発展させ、新しい文化を創造するため、文化活動、まちづくりの各種団体や国内外の様々な地域との幅広い文化交流とネットワークづくりに努めます。
4.コミュニティ活動の推進
世代間に共通した郷土愛を醸成するため、伝統文化や生活文化を継承する地域コミュニティを基本にしたまちづくりの推進に努めます。
第6章 推進体制等の充実
文化に対する関心や期待の高まりの中で、文化行政の対象領域が拡大してきています。このような状況に応えて、文化振興施策を総合的・効果的に推進する体制の整備を図っていきます。
また、文化の視点を取り入れた施策を推進していくため、職員の文化意識の啓発などを進めます。
第7章 文化振興基金の活用方針
1.先導的なイベントへの支援
市制の節目をはじめ市で行う大規模な行事など、文化振興の機運を高めるための先導的なイベントに対して支援します。
2.人材への支援
若い世代、次世代を担う子どもなどを中心として、文化振興を支える人材育成に支援します。
3.文化活動への支援
文化意識の高揚を図り、市民みんなで文化を発展させていく、自主的で幅広い文化活動に対して支援します。
4.基金運営審議会の設置
基金の活用を適正に行うため文化振興基金運営審議会(仮称)を設置し、運営します。