ユネスコ無形文化遺産「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」
2020年12月17日、日本に新たなユネスコ無形文化遺産が誕生しました。
その名は、「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」。
日本の伝統建築技術は日本の自然環境に適応したもので、自然との共生や循環型社会といった背景の中ではぐくまれ発達してきました。
「宮崎兄弟の生家」には伝統建築工匠の技がたくさん!
宮崎兄弟の生家には、これら伝統建築技術がいくつも使われています。
とりわけ、目を引くのが茅葺屋根です。
日本で茅葺屋根といえば、白川郷や五箇山の合掌造り集落が有名ですが、実はその屋根の造りは民家の茅葺屋根としては珍しく、一般的には宮崎兄弟の生家のような「寄棟(よせむね)」が大多数を占めています。
断熱性・保温性・雨仕舞・通気性・吸音性を兼ね備えた茅葺屋根は、日本の気候に適した屋根として古くは縄文時代頃から使われてきたと考えられています。
茅葺屋根ができるまで
茅という植物はそもそもありません。茅は、屋根を葺く草の総称で、狭い意味では最もよく使われるすすきのことをいいます。その他にも、よし(葦)、かしやす、かるかや、しまがや、ちがや等のイネ科の多年草や、麦わら、稲わら等の穀物の茎といった手近に入手できる材料が茅と呼ばれたのです。
茅葺屋根ができるまでには、大きく四つの工程があります。
- 茅刈り
秋の収穫が終わると茅刈りが始まる。青いうちに刈ると耐久性に乏しくなるため十分枯れてから刈る必要があった。西日本では11月から12月頃が一般的であった。 - 運搬
毎年茅を採集するために確保された茅場は、集落の周囲の耕地になりにくい山腹や山頂等につくられた。山道を家まで運ぶのは主に人力に頼るしかなく、茅刈り以上の労力が必要だった。 - 貯蔵
刈られた茅は大半が屋根裏で貯蔵された。湿気を防ぐことができ、かつ囲炉裏の煙にいぶされた茅は防腐剤を塗られたようなもので30年から40年でも貯蔵できた。不測の事態のためにもある程度の茅が各家で貯蔵された。 - 茅葺き
屋根の厚みを定める下葺きの「軒付け」、軒付けをした上から棟をつくる前までの屋根面を葺く「平葺き」、棟で茅を葺き納め、雨や風から守る「棟仕舞い」をして完成。
日本の「匠」やその「技」を伝える宮崎兄弟の生家。いつもとは少し違った角度から見てみてはいかがでしょうか。